思えば不思議だけど…毎日のようにうちに遊びにきてた時期があった。いっしょに遊んでるうちに、急にピタッと動かなくなって、何かを思い出そうとしてるみたいな様子になって… で、おやつを取りにいくとか言ってダイニングへ行っちゃって、少しすると、ピアノの音が聞こえてきて…
始めの何回かは、わたしもダイニングへついていって、ピアノをひいてるところを見ようとしたけど、わたしが見てることに気づくと、いつもピアノのふたを閉めてもどってきた。
だからそのうち、わたしはリビングのソファで待つようになった。ソファに横になって、ピアノの音を聞いた。ときには何時間も。ときには、そのままねむってしまうこともあった。
あのとき、わたしのことどう思ってたのかな?
わたしのことなんて、考えてもいなかったのかも。
自分の家にはピアノがないから、うちのをひきたくて来てただけなのかも。
あのころからもう、目を開けているときは、わたしたちって友だちなのか、わからなくなることがあった。
だけど、目を閉じているときは
わたしだけのためのコンサートみたいに思えた。